聖なる草「セント・ジョンズ・ワート」
 6月に黄色の花をつけ、薬効もこの時期一番あることから、夏至をめどに収穫するセント・ジョンズ・ワート。このハーブは西洋オトギリソウという聖なる草です。日本全土の野山にも、和のオトギリソウが自生しています。このハーブは世界中で使われてきた薬草なのです。
 山に囲まれた町で生まれた私は、小さいころからオトギリソウのお世話になって育ちました。オトギリソウをホワイトリカーに漬け込んだ薬用酒があり、あせも、切り傷、打ち身などにはオトギリソウ酒が出番でした。逆さ爪をはいで傷ができ、赤くなってズキズキ痛む時には、ガーゼにオトギリソウ酒をたっぷりつけ、冷湿布して一晩おきます。すると朝には発赤もとれ、痛みも治まっています。
 西洋のハーブと付き合うようになってから、歴史書などを読むと、オトギリソウが世界中で傷薬として使われていたことにおどろきました。ジョン・ジェラードという15世紀から16世紀に活躍した外科医であり、本草学の研究者が「傷薬にはこのハーブほど良いものはない」と書き残しているほどです。
 和名のオトギリソウという名前は、十世紀ごろ、すぐれた鷹匠がタカの傷薬として秘密の草を用いて傷をなおしていましたが、弟がその秘密を仲間にもらしてしまい、兄の怒りをかい切り殺されてしまいました。それ以来、秘密の草はオトギリソウとよばれて世に知られるようになったという伝説があります。
 西洋では十字軍が「悪魔の逃げる草」という名前でよび、魔よけに使われてきました。フランスやドイツの農村では、6月24日の聖ジョンの祭日に、この草を家の入り口や、窓につるして魔よけにするそうです。6月24日は夏至のころで、この日に集めた薬草はいちだんと強い魔よけや薬効があると信じられているので、聖ジョンの草、セント・ジョンズ・ワートといわれるようになりました。
 今年も、聖なる草が黄色の花をつけ始めました。
(02.6.4)